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ボイタ協会 updated 2017-03-02

 ボイタ法とは

ボイタ法


ボイタ法


ボイタ法はボイタ教授によって発見された『反射性移動運動』を利用した運動機能障害に対する治療法です。子どもに特定の姿勢をとらせ、特定の部分(誘発帯)に適切な刺激を与えると、全身に運動反応(筋収縮)が繰り返し引き出されます。教授はその反射性移動運動が新生児でも大人でも脳性麻痺児でも引き出されることを確かめ、人類の脳に生まれつき備わっている運動パターンであると考えました。その運動パターンは正常運動発達の過程では自然に現れて来ますが、脳性麻痺児では自然には出現することが出来ず、治療によって引き出す必要があります。引き出された反応を自分のものにする可能性は、脳の可塑性から考えても脳損傷の時期に近いほど、月齢が小さいほど大きいはずです。しかし、一般に軽い脳性麻痺では1歳半~2歳以上にならないと確定診断は困難です。そこで教授は生後6ヶ月までに早期診断できる方法を考案しました。

ボイタ教授について


ボイタ教授について


Vaclav Vojtaボイタ教授は1917年7月12日、チェコ共和国ボヘミアのモクロスキーで生まれ、2000年9月12日、ミュンヘンで亡くなりました。彼は神経内科医であり小児神経科医でもありましたが、肢体不自由児施設に勤めていた時に反射性移動運動を発見しました。1968年プラハの春・チェコ事件に出会い、ドイツに亡命した後、ケルン大学整形外科とミュンヘン小児センターで活躍し、1990年からはプラハのカールス大学で教授として教鞭もとりました。彼は多数の表彰を受けていますが、整形外科領域でもっとも卓越した人に与えられるハイネ賞の受賞は特筆に値します。

早期診断


早期診断の実際


一般には姿勢反応が有名になりましたが、ボイタ診断の真髄は、自発運動・姿勢反応・原始反射・社会性の発達などの相互に見られる不調和(dysharmony)に注目することにあります。先ず、仰向きやうつ伏せで赤ちゃんの姿勢の特徴や自発運動を観察します。仰向きでは目口手足の協調運動(手足の把握機能)を、うつ伏せでは支えて起き上がる能力を評価し、同時に手足の把握反射・ガラント反射・恥骨上反射・その他の原始反射の有無を検査します。この間に、声の出し方・表情・人見知りなど社会性の発達についても観察しますが、これらに加えて7つの姿勢反応の異常パターンの有無と発達レベルを判定するのがボイタ診断に独特なものです。生後3ヶ月までに診断することを目標とし、障害がはっきりする前の状態を中枢性協調障害・脳性麻痺危険児などと診断します。左右差や不調和の強い姿勢運動パターンを示す赤ちゃんが成長して脳性麻痺ではなく、自閉症・学習障害・ADHD・発達性協調運動障害などの発達障害の診断を受けることも少なからずあります。

治療


治療の実際


『反射性移動運動』には仰向きや横向きにして始める反射性寝返りと、うつ伏せで始める反射性腹這いがあります。反射性寝返りで引き出される運動パターンは生後3ヶ月から8~9ヶ月の正常発達に出てくるパターンです。これに比して反射性腹這いは正常運動発達に見られる腹這いそのものではありません。しかし、引き出される運動パターンは人が生まれてから歩くまでに必要な正常運動パターンの部分反応を示しています。それは脳性麻痺児にとっては自然には経験できないパターンです。ボイタ法は寝返りや腹這いそのものを練習しているわけではないのです。

  • *反射性寝返りⅠ相;出発肢位は仰向け。誘発帯は基本1つ。3ヶ月児のように、仰向けで両下肢を挙上し骨盤を傾け、4ヶ月半の寝返りの準備段階までの運動パターン(筋活動)を促通する。
  • *反射性寝返りⅡ相;出発肢位は側臥位。誘発帯は基本2つ。下側の上下肢で支え前方へ体幹を持ち上げ、上側の上下肢を上前方に振り出し、四つ這いになろうとする運動パターン(筋活動)を促通する。
  • *反射性腹這い;出発肢位はうつ伏せ。誘発帯は基本9つ。片方の肘で支え、そこに身体を持ち上げていこうと反対の踵で床を蹴り出し前方に腹這いするような動作が反応として現れる。正常発達でいうと、3ヶ月からの頭部持ち上げから4ヶ月半の片肢支持、さらには1才過ぎの歩行開始までの足部での支持や蹴りだし等の運動パターン(筋活動)が促通できる。


ボイタ法の治療では理学療法士がご家族にお教えし、1日1~4回毎日家庭で
行ってもらうのが基本です。1日の回数は年齢その他によって多少異なります。
赤ちゃんはいつもと違う運動パターンが起こって来ることにびっくりして、初
めの内は治療中泣くことも多いですが、毎日行っていると慣れて段々泣かなくなることも多いです。治療が済んだ後、終わったことを伝えるために治療した人(お母さん)が対面で抱いてあげるようにして下さい。全身運動をした後の恍惚感と相まって抱かれると同時にピタッと泣き止むようになり、治療してくれた人(お母さん)への愛着が強まっていきます。

治療効果


ボイタ法の治療効果


前記のように、反射性移動運動のそれぞれによって治療中に起こってくる反応(筋活動)には違いがありますが、すべてに共通して求められるのは、脊柱の左右対称的な伸展(背すじをまっすぐにすること)と回旋で、それらが目口手足の協調運動や上下肢の左右交互性の運動につながります。このような脊柱の左右対称性の伸展は脳性麻痺児には不可能な運動パターンです。また、反射性移動運動による筋活動では眼球や舌の運動、唾を飲み込む運動、声が出しやすくなる喉の運動、深呼吸などの反応も起こります。呼吸筋・腹筋の収縮が起こると、同時に膀胱や腸での筋肉の働きも強められます。このようにボイタ法の治療では、単に運動ができるようになるばかりでなく、全身の筋活動と血流の改善とともに睡眠が改善し、規則正しい生活や情緒の安定が得られるようになることを目的にしています。

対象者


治療の対象者


脳性麻痺だけでなく、リハビリテーションにおける治療分野に広い適応を持っています。当然のことながら、治療効果を期待できる疾患はすべて治療対象となりますが漫然と治療を続けるのでなく、目的を持ち効果を期待できる限り、乳幼児期から成人まで治療を続けることができます。

  1. 脳性麻痺・脳性麻痺危険児・中枢性協調障害
  2. 脳炎脳症後遺症・その他後天性疾患(成人の脳梗塞・脳卒中なども含む)
  3. 二分脊椎・分娩麻痺・脊髄損傷(事故後遺症も含む)
  4. 筋疾患・その他退行性疾患
  5. 染色体異常症・奇形症候群
  6. 呼吸障害・摂食嚥下障害
  7. 側彎症・斜頚・先天性股関節脱臼・臼蓋形成不全症・多発性関節硬縮症・骨関節疾患 O脚・X脚・内反足・その他整形外科的疾患

参考文献


参考文献


ボイタ法による診断と治療についてさらに詳しくお知りになりたい方は次の本を参考にしてください。

  1. Vaclav Vojta著、富雅男訳 『乳児の脳性運動障害』  
医歯薬出版株式会社(ボイタ教授原著の翻訳本で医師・療法士などの専門家用です)
  2. Vaclav Vojta, Annegret Peters 著、富雅男訳 『ボイタ法の治療原理』  
医歯薬出版株式会社 (ボイタ教授原著の翻訳本で医師・療法士などの専門家用です)
  3. 家森百合子・神田豊子・弓削マリ子著  『子どもの姿勢運動発達』  
ミネルヴァ書房 (写真が多く、お父さんやお母さんにもわかりやすくボイタ法について解説しています。医師・保健師・助産師・看護師・保育士の方々にもどうぞ)

 

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